教育×ト×受験

教育×ト×受験

2024-02-02

受験のための教育か、教育の先の受験か

社会の変化とともに変わっていく教育、とくに最近はチャットGPTやCopilotなどの生成系AIの出現により従来の「詰め込み教育」の終焉が、様々なメディアで多くのコメンテーターにより謳われ始めた。

しかし、実際のところ多くの教育現場、特に私が関わっている高校教育の現場では、授業内容・カリキュラムや指導方法について大きな変容がここ数年の内に訪れるとは到底思えないというのが私の率直な感想である。以下にその理由や背景について少し論じてみたい。

私が考える大きな理由としては以下の3点である

  1. 大学受験が変わらない
  2. 教師のスキル不足
  3. 生徒たちの意識

1.大学受験が変わらない

 いくら社会が変わっても、大学受験のテストというゴールが変わらないと高校教育は変わりません。「アクティブ・ラーニング」だとか「対話型」の授業だとか、一方的に教えることが「悪」であり、対話を通して考えさせることが重要であるのだ、といった言葉は近年よく耳にします。が、しかし、特に私が働いている高校は割と進学校ではありますが、現在でさえ、教科書の内容をだいたい3年生の1学期までに教え終わり、2学期から大学受験受験に向けて一直線です。そんな状況下で「アクティブ・ラーニング」だの「対話型」の授業だの言っていれば、到底現在の大学受験に必要な力は身に付けることはできません。

 重要なのは、だから「アクティブ・ラーニング」などの深く考えさせる授業がダメなのではなく、現在の大学受験というゴールを目指す上では余裕が無いいうことであって、ほんとはやれるんだったらそんな楽しそうな授業はやってみたいという思いはもちろんあります。

2.教師のスキル不足

 多くの教員(特に30代以上)は自身が「アクティブ・ラーニング」を受けたことが無く、そのやり方を熟知しているといえる教員もそれほど多くありません。私自身も、何度か研修などに参加したり、させられたりするなかで何度か触れる機会はあったものの、十分に実践できる機会がありませんでした。新しく何かに挑戦するには失敗がつきものです。その故、生徒の人生がかかっている受験に対して、長期的に、実験的に「アクティブ・ラーニング」の練習をするわけにも行かず、どうしてもこれまでのやり方に固執して再現性の高い教育を実践してしまっていることだと思います。

 また、公務員という職業の性質も考えてみると、我々公務員は新しいスキルを学び、自身の教師としての力をアップさせたとしても給料が上がったり、昇進することはほとんどありません。細かくはまたの機会に別の記事で説明したいと思いますが、教師の昇進≒教頭や校長などの管理職になることです。
そしてこれにはあまり「授業力」や「教員としての指導力」が直接的な要素になっているわけではなく、どちらかといえば、「学校運営」や「組織づくり」の能力が問われているような気がします。
つまり、「授業力」「指導力」の向上が直接、自身の給料アップには繋がりません。だからといって、教員が皆、自身のスキルアップを志していないわけではなのですが、忙しい毎日の中、日々の業務をこなすことにいっぱいいっぱいの教員も多く、「新たな指導法・新たな授業スタイルによって生徒たちを新しい社会に導こう!」という意欲・熱意にあふれた教員はあまり見かけることができないのかもしれません。

3.生徒たちの意識

 教育にとっての主役は生徒であることは間違いないだろう。当の生徒たちはどう感じているのだろうか?
私のこれまで教師人生(といってもたったの11年だが)から見ても、特にここ数年、生徒(高校生)は大人しく、素直になっているような気がします。「教師から言われたことを忠実に行う」ことには非常に長けているが、「自分に必要な学習を分析・計画して実行していく」ことはあまりできている感じはないかなぁ…というのが正直なところ。つまり生徒側から「もっと考えさせる授業をすべし!」「従来型の詰め込み教育は廃止すべし!」といった声はとてもじゃないが挙がってはこないだろう。
 そういった、現代の生徒たちにこそ正に「考える力」をつけるための教育が正直必要だとは思う、それは重々承知しているのだけれども、上に述べた理由によりなかなか授業の形を考えるのは難しいところである。

まとめ

今回は以下の3つの観点からなかなか変化することが難しい教育と受験について文書を書いてみました。

  1. 大学受験が変わらない
  2. 教師のスキル不足
  3. 生徒たちの意志

 上級教育機関における教育内容が変わるか、授業を実際に行う我々教が変わるか、授業を受ける生徒の意識が変わるか、いずれかから変化が起こるかはわからないが、どれか一つが変わろうするときに他の所から変化に対する拒否感・否定感を起こさないことだと思います。理想はすべてが同時に変化の必要性を感じ、実際の行動の変化を伴って、教育に関わる全ての人たちが変わっていく必要があるのかなと思います。
 その時に、自分だけ出遅れないように今できる準備をやっておかないとなと思う今日この頃です。